Crossing



































「今日なんかさ、30回も目が合ったんだよ。」


夕食を終えて席を立ちながら大きな溜息をつくハリーに一歩遅れて並んだロンとハーマイオニーは言葉もなく顔を見合わせた。


「その度に厭ぁな顔するんだもん。そんなに厭なら見なきゃいいと思わない?」


思わない?と尋ねているくせにこちらを向きもしないで、ハリーはぷんぷん怒っているが。


(・・・でも君も見るから目が合うんじゃないか、ハリー・・・・)

(・・・しかも回数数えちゃってるし・・・・)


溜息をつきたいのはこちらの方だ、とロンもハーマイオニーもがくりと肩を落とした。
ハリーがこうやってブチブチと文句を言っているその件に関しては、当然二人も気付いている。30回とは恐れ入ったが、日に何度も彼らの親友ハリー・ポッターと嫌味な薬学教授が互いに互いを見交わしていることくらい、気付かない方がおかしい。
 
というか、あれはすでに見つめ合っている、と言った方がいいだろう。
ハリーの言う、スネイプ教授の“厭ぁな顔”も傍目には照れているようにしか思えない。
大体、ハリーだって視線がかち合うたびに思いっきり頬を染めているのだ。




それに気付いていないのは多分当人だけ。

いちいち指摘するのも気が引けるからロンもハーマイオニーも敢えて何も言わないが、あのマルフォイにだって気付かれているというのに呑気なのか、それとも互いのことしか目に入っていないのか。ついさっきも(恐らく29回目だか30回目だかに)ハリーとスネイプが見つめ合っていた時、マルフォイは遠くの席から物凄い形相でハリーを睨んでいた。しかしそれにはハリーは全く気付いていないようなのだ。




「やっぱりスネイプって本当に僕のこと嫌いなんだな・・・」


(・・・いや、だから、そんな哀しげに呟かれても・・・困るよ、ハリー・・・)

(・・・本人がこの体たらくだとも知らずにヤキモチ妬いてるマルフォイがいっそ
愛おしいわよ・・・)



はじめは。

ロンとハーマイオニーの二人も、スネイプがハリーを見るのは何かにつけて減点を言い渡すために見張っているのだと思っていた。しかし、ある頃からその視線と減点とに一定の法則があることに気付いたのだ。つまり、明らかにふたりの視線が交わっていると相当数の生徒に知られた場合、スネイプは苦虫をかみつぶしたような顔つきで粛々と減点を言い渡すけれど、それがあまり目立たなかった時は減点も罰則課題も登場しない、という法則だ。


それにもう一つ重要なのは、ロンが考える通り、ハリーの方がスネイプを見なければ視線が合うことなどあり得ない、という事実だろう。ハリー自身が言うように嫌いなら見なければいい。なのにハリーはしょっちゅうスネイプ教授に視線を送る。そんなにスネイプを恐れているのか、とも思ったけれどよくよくハリーを観察していると、びくびくして様子を窺っているというよりはむしろ、常にスネイプの姿を目で追っているようにしか見えなくなってきた。
何しろ、マクゴナガルに注意を受けている時でさえ、ハリーはスネイプを見ているのだから。




と、言っているそばから、ハリーは後ろを振り返り、ロンとハーマイオニーを素通りして奥の教授席を見やる。


「あ・・また・・・・・。」


大広間の最奥と扉口、長い距離を縦断して絡み合うふたりの視線を確認して、ロンはさすがにあからさまな溜息をつき、ハーマイオニーはすううっと目を細めた。


「あ〜もう、面倒くさいわね。」


え?とハリーが顔を向けるのと同時に、ハーマイオニーは杖を取り出してごく短い呪文を唱えた。


「なっ?!」


途端にハリーの視界が焦点を失ってぼんやりと霞む。


「まあっ!ハリーったら、“自分で”自分の眼鏡をフッ飛ばすなんて、どうしちゃったのぉぉぉぉ?!」

「な、な、何言ってるんだよ、ハーマイオニー?!君が・・っ」


だが、眼鏡をもぎとられてまともに物の見えないハリーには、何のためか知らないが迫真の演技で大声を上げるハーマイオニーの表情も判別できないし、肝心の眼鏡の行方もわからない。


「ハリー、きっかけは作ってあげたんだから、後はうまくやりなさいよ?」

「え・・っ?ハーマイオニー、君、何を言って・・・」


ふいに声を落し、ぽん、とハリーの肩を叩いたハーマイオニーはそのまま踵を返してどんどん歩いていってしまうようだ。ついでにロンも、ハリーの耳元へ顔を寄せ、同じくこそこそと潜めた声で、


「頑張れよ、ハリー。遠慮なく思いっきり見つめ合えばいいよ。じゃあね。」


と、やはりハリーを置き去りにして駆けだして行ってしまった。


「あ、ちょっと、ロン?!ねえ、一体ふたりともどうしたんだよ?!僕の眼鏡、どこにやったんだよ?!」


しかしロンもハーマイオニーもあっという間にハリーの心もとない視界から消えてしまい、頼りの声も周囲のざわめきに掻き消される。そう言えば、どうしてこんなにざわざわと煩いのだろう?と、ハリーが体を捻った時だった。








「お探しの物はこれですかな。我輩の顔を目がけて矢のように飛んできたのだが?ミスター・ポッター。」






どん、と何かに顔からぶち当たり、弱い視力でもはっきり認識できるほどの黒一色に包まれた。


「わ・・・ス・・・スネイプ先生・・・?!」


聞き覚えのある声に慌てて顔を上げると、随分近い所にスネイプ教授の顔があった。それでも、見上げたその先にある顔はやっぱり輪郭すらぼやけるほどで、とても表情は読みとれない。もっとも、声の調子からしていつも以上の険しい顔つきなのだろうということくらいは容易に察せられるのだが。


「す、すみません・・どうして先生のところまで飛んで行ったりしたのか・・・」

「我輩を狙ったからであろう。どういうつもりかね?これは我輩に対する挑戦なのかね?」

「ち、違います!第一、僕がやったんじゃ・・・・」


言いかけて、ハリーは残りの言葉を呑みこんだ。
やったのは、ハーマイオニーだ。ハーマイオニーの名前を挙げたところで、どうせグリフィンドールから減点されるのは同じことだし、第一、ハーマイオニーがどうしてそんな真似をするのかと詰問されたら、それこそ困る。ハリーにだって分っていないのだから。


「・・・・あの・・・・・すみません、何かの間違い、なんです。お怪我はありませんでしたか。」


消え入るような小さな声でなんとか取り繕おうと言い募ってみたが、どの道苦々しい顔をしているだろうと分っていても反応の見えない相手と話すのは思った以上にドキドキするものだ。


「ふん。貴様の魔法ごときで怪我を負うような我輩ではない。しかしながら教師に向かって物を投げつけるという行為は許し難い。よって、グリフィンドールから10点減点のうえ、罰則を課すこととする。」

「はい・・・」


反論も言い逃れも無駄だ。
どうしてこんなことになったのか、ハーマイオニーを恨みたい気分だったがどうせ罰則が確定しているなら余計な事は言わない方がいい。


「ポッター。」

「はい?」

「何をぼうっとしているのだ。とっとと受け取りたまえ!」


何を、と言葉が出る前に指先に何か固い物が触れた。


「あ、眼鏡・・・・」


ハリーは、俯けたばかりの顔をあげ、スネイプが差し出した眼鏡を受け取ろうと手を開いたが────






ガシャン──────





「あっ!」


強張った指先は逆に眼鏡を打ち払ってしまい、石造りの床に勢いよく叩きつけられていた。


「ご、ごめんなさい!」


今の音ではレンズが割れたかもしれない。
慌ててハリーはその場へ屈みこんで、ぼやけたフォルムの眼鏡へと手を伸ばした。





────危ない





「え・・・」


が、眼鏡へ手が届く前に手首をぎゅっと縛められ、すぐ目の前にスネイプの顔が現れて、ハリーは全身を竦ませた。
眼鏡をしていないのに、はっきりと見える程の距離。
怒ったのとも、不機嫌なのとも違う、見たこともない表情が、その眼に浮かんでいた。


「せんせ・・・・」

「よく見えてもいない者が迂闊に割れたガラスに触るな!」


貴様が怪我でもしたらまたポンフリーに我輩があらぬ疑いをかけられるのだから・・・・と、なぜか慌てたように付け加える声も、いつもの冷たさや厳しさとは違う何かを含ませていて─────




僅かな時間、本当に近い距離で互いの目を見つめ合ったふたりは、やがてはっと我にかえり、スネイプは無言のまま鮮やかな手つきで壊れた眼鏡と割れたレンズを拾い集め、ハリーはやり場なく目を泳がせてやはりただ黙った。



ものすごく、ドキドキする。



眼鏡なしではっきり顔が見える程の距離にふたりして屈みこんでいる、という状態の不自然さも勿論だが、なにしろここにいるのはスネイプだ。嫌味で意地悪で冷淡で、ハリーを嫌っているはずの、闇色の薬学教授。でも何故かハリーの壊れた眼鏡をハリーに代わって拾い集めてくれている彼の、微かな動きに従って揺れるローブの軽やかな音は不思議と心地いい。それに、これだけ接近していると、僅かではあるが体温が伝わるのか、とても温かいような気がした。


「破片を組みあわせないことには復元もできん。一緒に来たまえ。」


一度はすぐに魔法で直そうとしたのだろう、ローブの内側から杖を取り出したスネイプだが、顔をしかめてそう言うとばさりとローブを払いながら立ち上がり、ハリーを包みこんでいた奇妙なぬくもりがそれに比例して去ってしまう。
無意識に、ハリーの視線はスネイプの動きを追いかけた。


「・・・スネイプ先生・・・眼鏡、直してくれるんですか・・・?」

「罰則があるのだ。眼鏡がなくては課題ができないのではないかね、君は。」

「はい・・・そうですね・・・」


罰則の為に──というのが口実であることくらいはすぐに分る言い方だった。

本当なら、ハリーの眼鏡が割れようがどうしようが、自分には何ら関係のないことだ、と突き放すはずのスネイプが、一体どうして、と思う。しかも、彼はハリー自身が魔法で眼鏡をスネイプに向けて投げつけたのだと信じているはずなのに。


「ポッター。何をぼんやりしている。早く来たまえ。我輩も暇ではないのだ。」

「あ、はい、すみませ・・・」


ハーマイオニーの行動も、スネイプの振舞いも、そして自分の心情も、何もかも訳が分らず頭の中がぐるぐるしていたせいもあるだろう。いくら眼鏡をかけていないからと言ってもさすがにそこにあるのは分っているドアに体の半分をぶつけて、ハリーはくらくらとよろめいた。


「痛っ・・・!」

「こんなものも見えんのか?」

「見えてはいますけど・・・距離感がつかめないっていうか・・・・」


と、答えたそばから今度は床材の石の僅かなくぼみに足をとられて思わず前へつんのめる。


「うわぁっ!」

「ポッター!」


反射的に、なのだろうきっと。
スネイプがハリーの腕を支え、転倒は免れた。


「ありがとうございます、せんせ・・・・」






あとは、“い”さえ言えば言葉が完結する、という所でハリーは大きく息を吸い込み、驚愕の表情で自分の腕を掴むスネイプの顔を見上げた。
やっぱり表情は分らない、分らないけれど。


「・・・・これでは一歩も進めないではないか。仕方がない。」


あの険悪な顔つきではないのでないか、と感じた。
と、同時に、またもや不意打ちの衝撃を受けてハリーは短く小さな叫びをあげる。
しかし、今度は何かにぶつかったのでも、転びそうになったのでもない。




ハリーの手がさらりと乾いた大きな手に包まれ、そのままぐい、と引っ張られたのだ。




一瞬、自分の今の状態が、理解できなかった。

ただ、自分では絶対にこんなに風に歩きはしない物凄いスピードで勝手に足が動いている、という感覚と、自分のものではないローブの布地が体の側面に触れながら風をはらんで動いている、という感覚を感じ取るのが精いっぱい。
周囲にいるはずのたくさんの生徒たちが綺麗に道をあける様子が、おぼろげな視界にはまるで前進する船の舳先から掻き分けられる海面を見ているかのようだったが、その海もあっという間に通り過ぎてしまい、殆ど小走りになる足音だけが聞こえるようになる。自分の、パタパタと忙しない足音と、隣から聞こえてくる馴染みの重く、なのにどこか優雅な足音と。




隣。




不意に、それを意識してしまったのは、その他に何の音も気配も感じられなくなったからに違いない。


(手・・・僕の手・・・・スネイプの手・・・)


手を、繋いでいる────。
セブルス・スネイプと。
ハリー・ポッターが。


「せ、・・・先生?!スネイプ先生?!」


突然呼ばれて不審に思ったのだろう、スネイプがふとこちらを向いた。


「あのっ・・手・・・っ」


だが、ハリーが裏返りそうな声でそう言うと、再びスネイプは前に向き直り、歩くスピードを更にあげる。


「・・・仕方あるまい!何度もぶつかったり転びそうになったりされては我輩の部屋へ着くのに何時間もかかる!さっきも言ったが我輩は暇ではないのだ!」


そんな風に言われては、もう何も言えない。
もっとも、心臓がドキドキして、肺が酸素を取り込むのに忙しくて、言葉など探している場合ではなかった。だが、スネイプの歩くスピードに乗せられて殆ど無意識に足を動かしながら、脳みそは勝手に全然別の活動をしているようだ。


(スネイプの手って・・・・もっと冷たいと思ってた・・・・)


大きな手のひらと長い指にすっぽりと包みこまれたハリーの手など幼児の手のように小さく思えるが、そうして全体に伝えられる温もりは本当にこの持ち主があのスネイプなのかと疑ってしまう程だ。何だか怒っているみたいにぎゅうっと強く握られていても、怖いとは感じない。むしろ、とてつもない安心感に充たされて、ついハリーも同じくぎゅっとスネイプの手を握りしめていた。




毎日毎日、厭になるほど目が合って、本当にうんざりするくらい減点だの罰則だの言い渡されて、嫌いなはずなのになんとなくその存在を当たり前のように感じて、いつの間にかスネイプの歩く速度も仕草も、ちょっとした表情の違いも分るほどにこの人に馴染んでしまっていたけれど、こんな温かな手を持っていたことは知らなかった。でも、それは今までこうして直接この人に触れたことなどなかったからだ。触れることのできる人だとさえ、思わなかった。



だから、なんだろうか。



心臓のドキドキが、止まらない。









「・・・階段だ。」


耳の内側で煩いほどのそのドキドキに紛れて、小さな呟きが聞こえたのは、大広間からもうだいぶ歩いた時だった。
まさかとは思いながらも、気遣うようなスネイプの声そのものに戸惑って、ハリーは足を止めた。


「この暗さで地下へ降りるのはやはり無理か。」


だが、スネイプはそれを別の意味に解釈したらしい。それでなくとも灯りの乏しい闇の底へと続く螺旋階段を眼鏡のないハリーが降りてゆくことの困難を思いハリーが躊躇したと考えたのだろう。スネイプはハリーと一緒に足を止めて、ふう、と息をついた。


「だ、大丈夫です!・・・と、・・・思います・・・」


罰則を与えられる為に同行しているというのに、何故必死で“大丈夫”などと言うのか、ハリーには自分で自分が分らない。ちょっとだけ頭を働かせれば、“無理です”と答えてとりあえずスネイプから解放される道を選択するのが当然だと判るはずなのに。眼鏡を直してもらわなければ寮へ帰ることができないだとか口答えして罰則を増やされるのが苦痛だとか、そんな普通のことを考えたわけですらない。

ただ────





手を、離したくなかった。
それだけ。










「・・・・失礼。」



(・・・・失礼・・・・?)


何が───、と思った刹那。








離したくない───離してほしくない、と思った手が離れ─────
かわりに、肩をしっかりと抱き寄せられた。







「・・・先生・・・」

「・・・同じテンポで。」

「は・・・はい・・・・」




(ど・・・どうしよう・・・・!!)







心臓の鼓動がますます激しくなり、動機のせいか、眩暈までしてくる。
手に触れることさえ初めてでどぎまぎしていたというのに、スネイプとこんなに密着しているなんて信じられない。
しかも、さっきまではあんなに速足で闊歩していた人が、殆ど足許の段差が見えていないハリーに合わせてゆっくりゆっくり地下へ連なる階段を降りている。
その確かな足取りと、しっかりと支えてくれる腕のおかげで、見えない階段は何も怖くない。

なのに、気持ちはぐらぐらと揺れるばかりで────。



いくら嫌っていても一応生徒であるハリーを階段から転落させるわけにはいかないという義務感から、スネイプはこうしてハリーを補助してくれるのだろうけれど。



でも。








眩暈に加えて、なんだか酸素も足りなくなってきたようだ。
ハリーは、足が震えるのを感じて思わずスネイプにぎゅっとしがみついた。


「す、すみません、先生・・・ちょっと足が竦んで・・・」


鬱陶しい真似をするな、と怒られるかと思い、すぐにそう言ったのだが。


「・・・構わん。」


スネイプは短く答えると、ハリーがしがみついたのと同じだけの強さでハリーを引き寄せた。


「・・・・先生・・・・」


とても、温かい。
ハリーはスネイプに殆ど抱きかかえられてすっかり体を預けてしまいながら、そうっと目を閉じてみた。

どうせ暗闇しか視界にとらえられないなら、目をつぶってしまっても同じことだと思ったからだ。実際、目を閉じても何も変わらなかった。機械的に足を動かすだけで、何の不安もなく階段を降りて行ける。
感じられるのは、自分を支えて導いてくれる大きな身体の確かさと、そのぬくもり。
そして、優しいと思えるほどの、その人の鼓動。
ふわふわと浮遊するような感覚の中で、気付かぬうちにハリーは微笑みを浮かべていた。






ずっとこの階段が続いていればいい。
このままどこまでもこうしてこのぬくもりに包まれていたい。





まさかスネイプも同じように思っているわけはないけれど、何故か彼も何も言わず、ただゆっくりと階段を下っていた。
一体どんな顔をしてハリーを抱きかかえ、いつもの三倍くらいの時間をかけるような遅い速度で歩いているのだろう。ふと、ハリーは思ったが、やっぱり見るのはやめた。どうせ目を開いても見えないだろうし、見なくてもいいような気がしたから。












実際、割れたレンズの破片をパズルのように器用に組み合わせてスネイプが直してくれた眼鏡をかけ、今日30と何回目かに目が合った時、改めて見たスネイプの表情は想像通り、いつもの仏頂面にほんの僅か困ったような、柔らかいような、不思議な色を浮かべたものだった。


















「ハーマイオニー、スネイプみたいなああいうの、なんて言うんだっけ?」

「“ツンデレ”よ、ロン。」

「ハリーみたいのは?」

「“鈍感”ね。」

「でもこれで少しは自覚したかな。今夜、ハリーが帰ってこないってこともあり得るよね?」

「それはあるわ。ただし、罰則のために、ね。」

「ええ〜〜〜っ、まだモタモタする気なのかい、あのふたり。あんなイチャイチャしてて?」

「・・・ロン。訂正するわ、スネイプは“スーパー・ツンデレ”、ハリーは“超・鈍感”よ。」




地下へと続く階段の踊り場で、透明マントにくるまって下を見下ろしていたふたりは、同時に肩をすくめて寮へ向かって歩き出した。





















end













gin's works @ 2011.04.01up