Both of ───
for Halloween 2011
「先生っっ♪、Trick and Treat !!」
スネイプ教授の元へ現れた“悪魔”は、実に聞き慣れない言葉を吐いて、いきなり飛びついて来た。
「・・・っ!!どこから減点して欲しい?!」
「え?」
「英文法の間違いについてか?!無作法についてか?!それとも深夜徘徊についてか!!」
「・・・減点って・・・・先生、今夜はハロウィンだよ?減点とか、さびしくない?」
「やかましい。ではそれぞれについて5点ずつ、計20点の減点だ。」
「えええっ?!・・・・って・・・・先生?・・・なんか、5点、増えてないですか・・・?」
「・・・・文法、無作法、徘徊に加えて、その身なりのいかがわしさも減点対象だ!!」
「いかがわし・・・・??え?悪魔の仮装のどこがいかがわしいんですか?」
「いかがわしいであろう?!そのように、体の線があからさまに出るような服装は英国紳士として・・!」
甚だ遺憾である───、と続けたかったスネイプ教授の言葉はいきなり途絶えた。
“悪魔”が、ベッドの上で読書中であった彼の膝の上にずりずりと乗り上げてきたからだ。
「・・・ひょっとして・・・先生、妬いてる・・・?」
なんとも嬉しそうに笑う“悪魔”にスネイプ教授は二の句が継げなかった。
非常に貴重な蔵書の、この上なく難解なページの上にあろうことか堂々と脚を乗せ、放ったセリフが
── ひょっとして、先生、妬いてる?
・・・だ。
スネイプ教授ともあろう者が、この狼藉を許せるはずがない。
普通なら ── これが、ウィーズリーだのロングボトムだのあたりだったら ── まず間違いなく最強の呪文を使ってブッ飛ばした上で向こう一年間にわたる過酷な罰則を言い渡すところであるが(・・・そもそも、彼らがこのような狼藉を働くはずは、太陽が西から昇ってもあり得ないが)、この“悪魔”に限ってはそうもいかない。何しろ、こいつときたらブッ飛ばされようが、どれほどの罰則を課そうが、全く反省する気配もないし、第一残念なことに、彼の言っていることは8割がた、真実だったからだ。
つまり。
「・・・妬いてはいかんのかね。己の恋人がそのような煽情的な姿で校内をうろついたら、
大概気分を害するものだと、それくらい分らんのか、貴様は。」
スネイプ教授は苦々しい顔つきをして、“悪魔”を睨み据えた。
「や・・・だ、先生っ!そんな嬉しいことを怖い顔して言わなくたって・・・・♪」
「顔が怖いのは生まれつき・・・・って、おいっ!何をしておるのだ!」
本当は幼い頃は相当な美少年だったのだ、と言ってやろうかという一瞬の逡巡も消し飛んで、スネイプ教授は再び言葉を切った。
“悪魔”の華奢な手が、教授の上着のたくさんのボタンをプチプチと外しているではないか。
「何って・・・だから、“悪戯”です、先生!」
「普通は“悪戯”をしない代わりに菓子を要求するのであろう?!なぜ私に選択肢がない?!」
「だから言ったじゃないですか、“ Trick and Treat”って。」
“悪魔”はそう言ってにっこり笑った。
「・・・両方、というわけかね。なんと欲張りな・・・」
「でも、先生の好きな方法で“Treat”してくれればいいんですよ?・・・ね?」
不意に囁くように声を落とした“悪魔”が手を止めてそれを教授の首へと回し、ぴたりと体を寄せてくる。
柔らかな頬が教授の首筋に触れ、何か甘い香りが教授の鼻腔を掠めた。
「それに・・・先生も“悪戯”していいです・・・・」
焼いたマシュマロの匂いなのか、それともパンプキンパイか、キャンディーか。
甘い匂いを沁み込ませた体がぼうっと火を灯したジャック・オ・ランタンのように熱くなる。
教授は、わざとらしく溜息をついて、開いていた本を閉じた。
「では、伺うが、Mr.小悪魔。・・・・・・そのいかがわしい衣装はどうやって脱がせばよろしいのかな。」
低く耳元へ囁くその声に、“悪魔”は一瞬、くすり、と笑い、
「お好きにどうぞ──── 」
と言いながら、教授の耳にキスをした。
悪戯も、ご褒美も、お好きなままに ──────
end
・・・どうしても、はりたん誘い受けになるらしい・・・・・
Happy Halloween☆
gin's works @ 2011.10.31up