秘密───極上の獲物───







デカいヤマを踏んだ後、張りつめていた神経を解きほぐし、美味い酒を味わう夜ほど贅沢なものはない。
やけに静かなのはルパンがいないからだ。

「懲りぬ男だ。」

「アイツにとっちゃ、コレも予定調和なんだろうぜ。むしろ伝統の儀式ってくらいのモンだ。」

「盗んだ獲物を女に巻き上げられ、その女の尻を追いかけて、結局手ぶらで帰ってくる──
 情けない伝統の儀式もあったものだ。」

「俺は歓迎するぜ?お蔭で──── 」

───ゆっくり極上のお宝を味わえる……
囁いて、次元はバーボンのグラスを置き、結露のせいで濡れたままの指を五右衛門の襟元へ
忍ばせた。その指が冷たかったのか、一瞬だけ五右衛門の眉が顰められる。日常では見せる
ことのない隙だ。次元は含み笑いをしながら更に懐深く手を差し入れた。
薄いガラス細工でも扱うようにやんわり素肌を撫でると、侍の唇からウソみたいに甘い吐息が
漏れ出してくる。

「獲物を掻っ攫われた挙句に振られて帰ってくる相棒に申し訳ねえなあ。」

申し訳ない、とはちっとも思っていないが、感嘆は本当だ。
この世で自分ひとりしか知らない、侍の隠された表情。
やがて彼は恥じらいを浮かべながら肌を染めるだろう。
その後は本能に抗えなくなって次第に蕩けてゆく目で誘うだろう。
そして最後には、荒い呼吸と熱を撒き散らして欲望のまま妖しく肢体を躍らせる───
きっと、こちらの脳髄を煮えたたせるほどの艶やかさで。

「おぬしだけが宝にありつける、というのは解せぬ。」

胸をはだけ、すでに弛緩し始めた五右衛門はソファの上に自ら横たわってそっと次元に向けて
腕を伸ばした。袖がするりと肩まで落ちて、腱のしっかりした、しかしどうにも艶めかしい白い腕が
剥き出しになる。

「俺だけ?ンなわけねえだろう。おまえも最高に気持ちヨクさせてやるぜ?」

伸し掛かって行く次元を伸ばした腕で捕まえ、引き寄せながら、五右衛門は微かに笑った。

「───それならよい。」















gin's works @ 2013.4.24up